第1章 人気の高い浄土真宗
浄土真宗の教えをくわしく説明する前に、まずはこのページで浄土真宗の魅力についてお伝えします。
日本最大の仏教宗派
みなさんはお寺を見たことがあるでしょうか。日本は仏教国だといわれ、たくさんのお寺があり、お坊さんの数も多いです。外国人の観光客には、日本の美しいお寺を見るために来る人もたくさんいます。
浄土真宗は仏教の一派です。仏教には禅宗・天台宗・華厳宗・・・などなど、たくさんの宗派があるのですが、浄土真宗はその中の1つということです(後のページでくわしく説明します)。
日本で最も寺院数・信徒数が多いのが、浄土真宗です。お寺の数だけでも、日本全国で2万ヶ寺以上あります。
全国の寺院の合計はおよそ7万5千ヶ寺ですから、そのうちの約27%が浄土真宗のお寺です。つまり4回お寺を見たら、そのうち1回は浄土真宗のお寺だという計算になります。
小説にも書かれてきた宗教
浄土真宗の歴史は、小説の題材として取り上げられることも多いです。
たとえば五木寛之の『親鸞』、吉川英治の『親鸞』、倉田百三の『出家とその弟子』など、有名な小説家によって作品が生み出されてきました。
また哲学者や評論家や思想家なども、浄土真宗についての本を書いてきました。西田幾多郎、柳宗悦、三木清、亀井勝一郎、吉本隆明、梅原猛、内田樹など・・・。これまで数えきれないほどの本が出版されてきました。
なぜ浄土真宗はこんなに人気があるのでしょうか?
一般人のための教え
浄土真宗の人気がある理由の1つが「一般人のための教え」ということです。
仏教にはたくさんの宗派がありますが、そのほとんどは厳しい修行をすることが必要です。
まず家族と仕事を捨て、修行僧になる(出家)。そして危険な山の中を走ったり、滝に打たれたり、座禅や断食をします(修行)。そうやって心も行いも清らかにして、悟りを開くわけです。そのため出家できない人にとっては、手が出せない教えも多いのです。
しかし浄土真宗は、出家や修行ができない一般人も救われる教え。だからこそ最も多くの人に広まり、親しまれてきたということです。
浄土真宗に注目した鈴木大拙
浄土真宗は一般人のための教えであり、出家や修行する必要がありません。
では浄土真宗の教えで救われたとしても、大したことはないのでしょうか? 他の宗派と比べて、劣った救いなのでしょうか?
決してそうではありません。浄土真宗の救いはとても奥が深いのです。
禅宗を海外に広めてノーベル平和賞の候補にもなった鈴木大拙博士は、浄土真宗に注目しました。
鈴木博士が特に高く評価したのは、浄土真宗の教えを聞いていた妙好人(みょうこうにん)と呼ばれる人々です。妙好人とは並み外れた信仰世界に生きた人々のことです。
鈴木博士は妙好人を研究し、禅宗の名僧と比べるほどにほめ称えて、妙好人のことを初めて海外へ紹介しました。(現在でも鈴木博士が書いた『日本的霊性』などを読むことで、妙好人の素晴らしさを知ることができます)
浄土真宗の魅力に触れたければ、妙好人の世界を知ることが最も分かりやすいでしょう。彼らの残した言葉や行動を知れば、浄土真宗で救われるとはどういうことかが理解できます。
次ページで妙好人の素晴らしさについてお伝えします。